一橋大学では、過去10年以上に亘り、アジア各国の中央銀行に対する技術支援を実施しています
実施主体
一般社団法人 一橋大学知識共創機構(HICKS)
(旧)一般社団法人 一橋大学コラボレーション・センター(HCC)
概要
中央銀行向け技術支援プロジェクトを構成する一橋大学教授陣は、全員が日本銀行の幹部経験を有しており、政策企画・立案を担当しています。
また、国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)といった国際機関等での勤務経験も有しており、こうした経験を生かし、幅広く中央銀行が直面する政策面での助言や、研修プログラムの提供を実施しています。
実施例
- カンボジア国立銀行(NBC)に対する技術支援プログラム
(JICA、2023~) - フィリピン中央銀行(BSP)に対する技術支援プログラム
(JICA、予備調査2020~2021、技術支援2022~2024) - ベトナム国家銀行(SBV)に対する技術支援プログラム
(JICA、2012~2020) - ミャンマー中央銀行(CBM)に対する技術支援プログラム
(JICA、2016~2021) - アジア中央銀行職員向け課題別研修プログラム
(JICA、2016~2022)
※ 2012年以前はIMF等が実施するベトナムやタイ等の中央銀行への技術支援に一橋大学教授陣が個人として参画。
具体的な技術支援の実施例(1)
カンボジア国立銀行(NBC)に対する技術支援(JICA、2023~)
2023年4月以降、①金融政策決定会合のあり方、②外為市場・短期金融市場のデータ収集、③資金需給予測の構築、および④政策対話の各分野について、NBCの技術支援に基づいて実施(3年間の予定)。
幹部層を含む主要職員との間での現地での出張会議、オンライン対話を重ねて政策助言を行っており、景気判断に資する企業サーベイの実施等に向けて取り組んでいる。
フィリピン中央銀行(BSP)に対する技術支援(JICA、2022~2024)
2022年3月以降、2年余りに亘って、 ①インフレトレンド予測・マクロ経済モデル、②国際収支予測、③金融調節、④短期金融市場サーベイ、⑤CBDC/Fintechの各分野において、BSPの技術支援ニーズに基づいて実施。
幹部層を含む主要職員との間での現地での出張会議、オンライン対話を丁寧に重ね、経済分析を行う上でのモデル構築やサーベイ実施などの成果を得た。
具体的な技術支援の実施例(2)
フィリピン中央銀行(BSP)に対する技術支援(JICA、2020~2021)
2020年10月以降、1年余りに亘って、 ①マクロ経済モデル、②国際収支予測、③CBDC/Fintech、④金融調節、⑤マーケットインテリジェンスの各分野において、BSPの技術支援ニーズの把握を目的として実施。幅広い情報収集や提供を行うべく、幹部層を含む主要職員との間でオンライン対話を丁寧に重ね、BSPが現在直面している金融政策運営をはじめとする中央銀行業務の優先的な課題について認識を共有した。
ベトナム国家銀行(SBV)に対する技術支援(JICA、2012~2020)
中央銀行職員に対する研修の提供に加えて、政策助言を実施。例えば、2017年からのプログラムでは、①金融政策運営、②マクロ経済分析・予測、③DSGEモデル構築の3分野で、SBVの役員(副総裁)から担当部局の幹部や担当者まで幅広い職員層と継続的に対話を重ね、政策助言やhands-onでのモデル構築支援を行った。技術支援の手法としても、一方向の講義ではなく役員から担当職員に至るまできめ細かく対話を重ねる双方向型の支援を行った。
具体的な技術支援の実施例(3)
ミャンマー中央銀行(CBM)に対する技術支援(JICA、2016~2021)
当初は若手職員を対象とした研修としてスタートし、徐々に、シニア層や中堅管理職職員向けの研修に対象を広げていった。そのうえで、役員(副総裁)や幹部職員との「政策対話」と、幅広い対象層に対して中央銀行業務の実務的な知識から政策提言まで提供するなど、CBMのニーズに柔軟に対応しながら実施した。
ADB主催中央銀行向けワークショップ などでの講義(ADB、2022~2023)
ADBが主催するASEAN中央銀行向け会合や、カンボジア国立銀行職員向けプログラムなどで講義を行った。
アジア中央銀行職員向け課題別研修 (JICA、2016~2022、金融監督向け2022~2024)
東京にアジア諸国中銀の中堅幹部職員を招聘し、2週間程度の期間中に、中央銀行実務の理論と実践を、講義(理論)、視察(日銀や金融機関、金融市場の見学)、ケーススタディ(マクロ経済政策の実践的な課題についてグループ討議)を通して多面的に習得させる研修プログラム。
講義の中には、「アジアの金融政策」「アジアのマクロ経済運営」「中央銀行のリサーチ」 「Fintech」など最新の情勢を踏まえたテーマが多く含まれている。HCCに所属する一橋大学教授陣は日本銀行の幹部級経験者で構成されているため、人脈や影響力の面から幅広い視察先からの協力が得やすい点は、本邦研修実施の際の大きなメリットである。
一橋大学教授陣について
関根 敏隆
一橋大学国際・公共政策大学院 教授
日本銀行で調査統計局長、金融研究所長を歴任。33年間に亘る日本銀行在籍期間中17年間を調査統計局で景気判断・経済予測作業に従事。1997~2000年国際通貨基金(政策企画審査局)、2004~2007年国際決済銀行(金融経済局)に出向。2020年8月より一橋大学大学院教授に就任し、アジアの中央銀行・経済官庁の若手・中堅幹部候補生に対し、中央銀行論、ミクロ経済学の講義を担当。
武田 真彦
元一橋大学国際・公共政策大学院 教授 現オーストラリア国立大学名誉教授
日本銀行を経て、2013年まで約12年間、国際通貨基金においてヨーロッパ、アジア諸国のカントリー・チームのリーダー及び局幹部として、金融政策、金融規制・監督など政策分析・提言に従事。2008~10年及び2013年9月以降、一橋大学大学院で、アジアの中央銀行・経済官庁の若手・中堅幹部候補生に対し、ミクロ・マクロ経済学、国際経済学、金融政策論、金融システム論等を担当。
野々口 秀樹
一橋大学国際・公共政策大学院 特任教授
2021年12月に一橋大学に着任、金融論や国際金融経済に関する最新潮流を紹介する講義を担当。前職の日本銀行では、考査責任者である上席考査役を歴任するなど、国際的な金融規制や金融安定化分野で豊富な経験。EMEAP(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議)の日本代表や議長も務めた。サイバーセキュリティやFintechなど金融のデジタル化のリスク管理について執筆、講演を行う。
(参考1)これまでに従事した一橋大学教授陣
鵜飼 博史 元一橋大学国際・公共政策大学院 特任教授 (元日本銀行国際局審議役)
下田 知行 元一橋大学国際・公共政策大学院 特任教授 (元日本銀行企画局審議役)
西川 広親 元一橋大学国際・公共政策大学院 特任教授 (元日本銀行国際局審議役)
前原 康宏 元一橋大学国際・公共政策大学院 教授 (元日本銀行金融研究所審議役)
渡邉 賢一郎 元一橋大学国際・公共政策大学院 特任教授 (元日本銀行金融研究所長)
(五十音順)
(参考2)APPP(アジア公共政策プログラム)について
中央銀行の技術支援を行う教授陣は、全てAPPP(アジア公共政策プログラム)を担当。
APPPはアジア各国の財務省、中央銀行等からの留学生(毎年15名程度)に対する修士課程プログラムであり、そこで積み重ねられた経験やネットワークが、アジア各国の中央銀行に対する技術支援業務に活かされている。
Asian Public Policy Program
Since 2000, the university has established a number of graduate education programs. The Asian Public Policy Program (APPP) is one of them and it was first established under the Graduate School of International Corporate Strategy in that year. When the university was reorganized in 2005, the APPP became one of four programs under the School of International and Public Policy.The Master in Public Policy program (APPP) targets young professionals in Asian governments, central banks and other policy-related organizations. The APPP has been and continues to be an important stepping-stone for such individuals to become fully-fledged fiscal or financial economists, economic planners, policy analysts, and policymakers in their governments as well as in international organizations.
APPP has awarded the Master’s degree in Public Policy to a number of qualified young professionals from East, South-east, South, and Central Asian countries. Most of these have come from ministries of finance, national tax agencies, planning agencies, central banks and other regulatory agencies.